微弱電流治療について

・微弱電流とは

元来、人間の体には極めて細かい電気が流れていることは広く知られています。
生体で流れている電気(生体電流)はマイクロアンペアという極めて微弱な電流です。
マイクロアンペアはミリアンペアの1000分の1です。)

この電気は細胞同士で連絡を取り合い、体の恒常性(一定の体調を保つ機能)
を維持することに利用されています。
神経の伝達も電気信号というのも、皆さんご存じだと思います。
(運動神経も自律神経もすべて電気信号です。)

ですが、損傷した組織からも電気信号が発生していることはあまり知られていないのではないでしょうか?
この発見により微弱な電流が治療に用いられるように研究され始めました。

研究では微弱電流刺激のプラス効果として、傷や骨折の治癒促進が実証されました。
微弱電流を用いたグループと通常のケアのグループでは約2~3.5倍ほどの違いがありました。

・なぜ微弱電流でこのような現象がおこるのか

大きく分けて3つの有意義な変化が身体でおこっていると言われています。
①体を動かすエネルギーである、ATPが通常の約5倍ほど増加する。
ATP(アデノシン三リン酸)はミトコンドリアが作るエネルギーで簡単にいうと充電池のような機能をしています。
私たちがご飯を食べたり、呼吸をするのはATPを作るためです。

②アミノ酸摂取は30~40%ほど増加する
アミノ酸はタンパク質をつくる材料です。人間の体はタンパク質で出来てるのはご存じだと思います。

③タンパク質の合成速度の向上
実験では断裂した腱や靭帯の修復が通常18ヶ月かかるようなものが6ヶ月に短縮されたそうです。

ここで興味深いのは、マイクロアンペアでは治癒速度に貢献しましたが
高いミリアンペアでは逆にATP生成は減少したことです。

・ATPが増えることのメリット
ATPの機能は
・筋肉の収縮
・タンパク質の合成
・神経伝達
・細胞膜レベルでの能動輸送 などなど
身体が活動するのに必要不可欠なものばかりです。

いわば生命の源といっても過言ではないでしょう。

上の三つはイメージしやすいですが、細胞膜での能動輸送について少し補足します。
細胞内では代謝した老廃物が生成されています。(乳酸など)
これらが細胞外へと排出(排出されるのにもATPが必要でこれを能動輸送といいます。
正確には乳酸は二次性能動輸送ですが詳しくは割愛します)が促進し
代謝に必要な乳酸がATPを必要とされる細胞に受け渡されます。
(乳酸はATPをつくるサイクルで利用されます)
この際、細胞は修復へと導かれ、痛みは軽減して組織は正常な機能を取り戻します。

まとめると損傷からの治癒には多量のATPが必要とされ、そのATPが増えることにより
加速されるということです。
そして、微弱電流治療器はATPを増やすことができる非常に優れた治療器だといえます。

現在では微弱電流治療も理解が増えてきて、アスリートを中心に脚光を浴びている
最新の治療方法です。
最近では2024年パリオリンピックで選手団のケアにエレサスが使われました。

ですが、ひとつ弱点があります。
それは刺激がほとんどなく、やってもらった感がないことです。
強刺激でスッキリを求めているかたには、物足りないかもしれません。
でもそれは逆に言うと、どのようなかたにも安心して受けていただけるということでもあります。